2014 年 56 巻 9 号 p. 588-592
地球温暖化抑制のための新たな二酸化炭素排出シナリオとして,長期的な気候変動被害が避けられると同時に,短期的により多くのCO2排出を許容するZ650を提示した。このシナリオをベースに,エネルギーモデルを用いて世界全体のエネルギーシステムのコストをミニマムとする最適化により世界で共有できる2100年までの長期ビジョンを検討した。その考え方と検討プロセスを概説する。モデルシミュレーションで得られた長期的な1次エネルギー構成は,現在の化石燃料中心(8割)から,2100年には再生可能と原子力エネルギーによる低炭素化かつ多元化する方向(合計7割)に変化していく。このビジョンは,現状政策の延長で得られるエネルギー構成より持続可能性が高く,しかも現状と将来見通しのある技術によって実現可能である。