Medical Mycology Journal
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総説
わが国の医真菌学史上特記すべき業績と症例
西本 勝太郎
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2017 年 58 巻 2 号 p. J29-J33

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抄録

日本人の名前がつけられている病原真菌と症例のいくつかを取り上げ,その背景,臨床像などを紹介する.
Trichosporon inkin は,Sarcinomyces inkin Oho の名で,1921年に陰嚢の病変から分離・報告された.Trichosporon asahii は,1922年,赤木により全身の乾癬様皮疹から分離された.両菌はその後Trichosporon beigelii に統一されたが,分子生物学的手技によるTrichosporon 属の再編のなかで,現在の命名となった.
Microsporum ferrugineum Ota は,太田によりわが国における頭部白癬の原因菌として報告された.その特徴の少ない形態から,一時Trichophyton ferrugineum とされたが,のちにMicrosporum 属に特有な形態をもつ大分生子が見い出され,改めて現在の名前となった.本菌による頭部白癬は現在わが国ではほとんどみられなくなっている.
Wangiella dermatitidis は,皮膚の肉芽腫性病変から分離され,Hormiscium dermatitidis Kano として報告された菌に由来する.現在phaeohyphomycosisの主要な原因菌の1つとしてあげられている.
Arthroderma vanbreuseghemiiTrichophyton mentagrophytes complex の有性世代の1菌種として,Arthroderma otaeMicrosporum canis の有性世代としてそれぞれ報告された.現在ペットより感染する皮膚糸状菌症の原因菌種として重要である.

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© 2017 日本医真菌学会
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