日本地すべり学会誌
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論文
土の残留強度特性に及ぼす温度の影響
柴崎 達也山崎 孝成
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2010 年 47 巻 5 号 p. 255-264

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抄録

土の残留強度に及ぼす温度の影響を検証するため, 13の土質試料についてリングせん断試験を実施した。約5℃~室温での検証によると, スメクタイト (膨潤性粘土鉱物) に富む粘土は, 低温環境ほどせん断強度が低下することが判明した。Ca型ベントナイトを用いた実験では, 高温環境ほどスティック・スリップ現象が顕著となり, 温度条件によってせん断挙動が変化することも判明した。また, 冷却時の強度低下は, 0. 1mm/min以下の緩速せん断の条件下で顕著であった。第三紀層地すべりの粘土を用いて応力制御実験を行ったところ, 温度低下によりせん断変位がクリープ的に進行するリングせん断挙動も確認されたことから, スメクタイトに富むすべり面粘土をもつ地すべりでは, 地温環境の変化が, 地すべりの発生に影響を与える可能性が示唆される。地すべりの発生誘因の判然としない事例では, 季節的な地温変動にも着目した調査が必要である。

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© 2010 公益社団法人 日本地すべり学会
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