2015 年 24 巻 2 号 p. 23-34
ミカンコミバエ種群Bactrocera dorsalis complex Hendel(Diptera: Tephritidae)は1986年2月に沖縄県で根絶が確認された.その後一定期間虫の誘殺がなかったが,1986年9月以降毎年誘引剤を用いたモニタリングトラップに再誘殺されている.こうした再侵入は気象要因による飛来侵入と寄生果実持ち込みの人的要因によるものとが考えられている.前者について再侵入リスク情報を提供するソフトウエア「ミカンコミバエ飛来解析システム」を開発した.本システムは飛来源と想定される台湾とフィリピンなどから毎日流跡線を計算し,それらが沖縄県上空を通過するかを調べる.沖縄県のモニタリングトラップの回収間隔が14日であることから,解析日と前13日の全14日間に流跡線が通過した日数をその日の再侵入リスク指数と定義し,その指数と日別誘殺数の推移をグラフで表示する.指数が0より大きい場合に再誘殺があれば,飛来による再侵入であると推定される.その時の流跡線起点から飛来源が推定できる.解析日の再侵入リスク指数は地図上で島ごとに図示される.さらに再侵入リスク指数は毎日自動で更新され,現場で簡便に利用可能である.本システムはミカンコミバエが誘殺された場合の要因解析のために沖縄県と那覇植物防疫事務所で利用されている.