日本小児腎臓病学会雑誌
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—総説—
特発性尿細管性蛋白尿症におけるCLCN5遺伝子の異常
五十嵐 隆芥 直子早川 浩松山 健白髪 宏司川口 治夫SE LloydSH PearceRV Thakker
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1996 年 9 巻 2 号 p. 135-139

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抄録

 Dentらが報告した患者を含む8家系の患者を1990年WrongらはDent病と命名した。1995年ThakkerらはDent病の責任遺伝子CLCN5をクローニングし,翌年Dent病におけるCLCN5の遺伝子異常を解明した。一方,私どもは1994年より本症の臨床症状が1980年に岡田らがわが国で初めてその臨床的特異性を明らかにし独立の疾患であることを提唱した特発性尿細管性蛋白尿症に類似する事を指摘していた。今回私どもは鈴木の暫定的診断基準 (表1) を満たす特発性尿細管性蛋白尿症14家系中10家系 (71%) にクロライドチャンネルN5 (CLCN5) の遺伝子異常 (nonsense mutation 4家系,missense mutation 3家系,frameshift mutation 2家系,CLCN5遺伝子全体を含むdeletion 1家系) を明らかにした。そのうち,明らかな血縁関係のない2家系の遺伝子異常は同一で,しかもDent病1家系の遺伝子異常と部位と塩基変化とが同一であった。遺伝子異常はエクソン8と11に好発部位が見られた。これらの研究と本症の臨床像との比較検討により,1) 特発性尿細管性蛋白尿症の中核的疾患はCLCN5異常症 (Dent病) であること,2) クロライドチャンネルN5は尿細管にて種々の機能を果たすことが明らかとなった。

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© 1996 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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