知能と情報
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原著論文
オフィスビルのファサードを対象としたデザイン発想支援システムの開発
その1. IDE(Interactive Differential Evolution)個体選択パターンの検討
河野 高英堤 和敏
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2011 年 23 巻 1 号 p. 54-64

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抄録

1.目的
建築分野をはじめ様々なものづくりの分野において形状・形態はデザイナーの手によって考案されている.しかしながら,その発想範囲はデザイナー固有の教育・環境等の背景に依存しており,発想を制限されてしまう弊害が指摘されている.建築物のファサードは特に訪問者の印象を左右しデザインの良し悪しのイメージが非常に重要であるため,ファサードの成り立ちや歴史等の様々な研究・知識化が行われているが具体的なデザインイメージに結びつくシステムとはなっていない.そのためファサードのディテールまで表現し設計者の嗜好を考慮しつつ,設計者の従来の発想を打破するような新たな方向性のデザインを創生する発想支援システムがあれば有効である.本研究の目的はオフィスビルのファサードを対象とし,設計者に新たなデザインに対する「気づき」を与える発想支援システムの開発を行うことである.本稿はその第1ステップとしてファサードを構成している形態要素の分析と,効率良く発想喚起させかつ使用者の使用時の精神的負担を減らすことを目的として,心理的負担が少ないとされている IDE における個体数と評価個体数の異なる3ケースについて評価者の心理的負担や発想支援としての満足度を比較し IDE の効率性とシステムの有効性について検討を行う.
2.手法
現存するオフィスビルの画像を収集し,比較分類することにより形態要素を 58 個抽出し,その 58 個の形態要素を個体ベクトルに置き換えることにより IDE アルゴリズムに組み込み,VRML を用いて 3D 画像によりファサードを表現するシステムを構築した.本システムの検証については主に建築を学んでいる被験者 10 人を対象に検証を行った.
3.結論
本稿の結論について個体数と評価個体数の関係では個体数を評価個体数より多くしたケースの方が同数としたケースより評価が高かった.個体数を増やした2つのケースでは評価が同程度であり,親個体以外の個体を世代毎に変える必要は無いことがわかった.評価個体数を変えずに個体数を変えることで,心理的負担は生じず,かつバリエーションを増やすことができるためシステム全体の評価を向上させることができ有効であると思われる.形態要素については被験者の個人的背景による違いはあるが,3つのケース共に全試行回数の9割方,発想を喚起させるデザインが創生され,そのおよそ半数が終了条件を満たしていることから妥当であると思われる.データ数は少ないが本システムは程度の違いはあれど,全ての被験者に比較的早い世代において発想を喚起させるデザインを提供することができ,有効であると思われる.

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© 2011 日本知能情報ファジィ学会
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