日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
化学療法で完全寛解後にMRIで脳梁膨大部病変が描出されたメトトレキサート関連びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の症例
青木 昭子小林 弘阿部 晋衛木村 亮之田口 丈士汲田 英裕
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2022 年 59 巻 1 号 p. 96-101

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抄録

86歳の女性,関節リウマチ(RA)のため少量プレドニゾロン内服中,意識障害と発熱のため,家族に付き添われて車いすで来院し,緊急入院した.27年前RAと診断され,20年前からメトトレキサート(MTX)と少量プレドニゾロンを内服していたが,3年前副鼻腔原発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)を発症し,MTX中止と,R-THP-COP療法(rituximab,pirarubicin,cyclophosphamide,vincristine,prednisolone)で寛解した.入院後の頭部MRIでは拡散強調像(diffusion-weighted images;DWI)で淡い高信号,Apparent diffusion coefficient(ADC)mapで低信号を呈する脳梁膨大部病変を認めた.髄液中に異形細胞は認められなかった.MRIは非典型的な所見であったが,意識障害は改善傾向を示したことから,脳病変をMild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion(MERS)と診断し経過観察とした.しかし,約3週間の経過で意識障害が悪化し,造影MRIで脳梁膨大部病変の増悪と新規病変を認め,DLBCL脳実質再発の可能性が高いと考えた.意識障害出現3カ月後に死亡した.脳生検で確定診断ができない場合,髄液の腫瘍マーカーなどリスクが少なく迅速に実施可能で,精度の高い診断法の確立が必要と考えた.

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© 2022 一般社団法人 日本老年医学会
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