社会老年学(social gerontology)は,高齢期における心理・社会的な要因の解明を通じてsuccessful agingをめざす学問である.とりあげられるテーマは幅広いが,就労と引退,福祉と介護,社会関係,社会活動,精神健康などが例としてあげられる.既存の学問分野との関係でいうと,社会学,社会福祉学,心理学,精神医学,看護学,保健学をはじめ,人口学,経済学,政策学,教育学,建築学など実にさまざまな学問領域が関連している.「社会」を扱っているため,本質的に,学問の成果が実践・応用に直結するはずであるが,わが国ではいまだ学問としての認知度が高くないためか,社会老年学を標榜している研究・教育機関はごく少数であり,欧米諸国と比較して研究者の層もうすいといわざるをえない.こうした状況の中で,学問としての社会老年学を確立することと,実学としての有用性を高めることの両者が求められていると考える.