日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
慢性透析患者における健康関連QOLに関連する要因
于 爾康目良 純一郎飯嶋 正広藤田 久美子江藤 文夫
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2006 年 43 巻 3 号 p. 383-389

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抄録

目的: 腎疾患特異的QOL尺度であるKDQOL-SFTM version1.3 (日本版) を用い, 慢性透析患者における健康関連QOL (HRQOL) に関連する要因について検討し, その要因, 特に透析リハビリテーションでの有益な要因を明らかにする. 方法: 横断研究で無記名自記式質問票を協力の得られた適格対象者 (102名) に配布し, 有効回答が得られた慢性血液透析患者67名 (回収率65.7%) を分析対象とした.「腎疾患による負担, 腎疾患の日常生活への影響, 症状, 透析ケアに対する満足度透析スタッフからの励まし, 原疾患, 標準化透析量 (Kt/Vurea), 透析クール, 透析継続期間, 透析関連血液生化学検査値」などの疾病や透析関連要因,「認知機能, 人との付き合い, ソーシャルサポート, 勤労状況, 睡眠身体活動度, 社会復帰状況, 自主運動状況, 自主運動有効性の認識」などのリハビリテーション関連要因及び「年齢, 性別, 学歴, 配偶者有無, 同居状況」などの基本属性要因の三つの側面より分析を行った. HRQOLは身体的側面スコア(PCS)と精神的側面スコア (MCS) に分けて算出したものを独立変数とした. 結果: PCSに関連する独立要因として症状改善度 (β=0.47, 95%CI: 0.23 to 0.61, P<0.001), 透析満足度(β=0.23, 95%CI:0.12 to 0.46, P<0.05), 血清アルブミン (β=0.30, 95%CI:0.10 to 0.46, P<0.005) や勤労状況 (β=0.32, 95% CI:0.11 to 0.50, P<0.05)が有意であった (調整済みR2=0.60). MCSに関連する独立要因として人との付き合い (β=0.36, 95% CI: 0.08to 0.57, P<0.05) や自主運動有効性に対する認識 (β=0.27, 95% CI: 0.04 to 0.50, P<0.05) が有意であった (調整済みR2=0.22). 結論: 透析患者の健康関連QOL低下を向上させるためさらに取り組むべき課題として, より満足度の高い透析治療症状及び栄養管理に加えて, リハビリテーションにおいては, 自主運動に対する積極的な態度, 社会参加と対人関係改善などを促進することが大切と考えられた.

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