日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
悪性リンパ腫と多発性骨髄腫を合併した1症例
岩切 理歌御子柴 路朗堤 久熊川 寿郎沢辺 元司新井 冨生大田 雅嗣江崎 行芳森 眞由美
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2001 年 38 巻 5 号 p. 678-681

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抄録

悪性リンパ腫の長期寛解中に多発性骨髄腫を併発し, さらに組織所見の異なる悪性リンパ腫を発症した症例を経験した. 症例は75歳女性. 1990年悪性リンパ腫 (diffuse mixed cell type) に対し化学療法を施行し寛解を得た. 1998年2月, 多発性骨髄腫と診断され, MP (メルファラン, プレドニン) 療法が施行されたがメルファラン総投与量240mgの時点で肺炎を合併したため化学療法は中止となる. 1999年4月, 発熱, 咳, 皮疹を主訴に当院入院となる. 入院時, 体温37.7℃. 全身の表在リンパ節の腫大と顔面, 体幹, 両上腕の皮膚に紅斑あり. Hb 8.4g/dl, TP 8.6g/dl, LDH 318IU, Ca 7.9mg/dl, IgG 3,809mg/dl, IgA 57mg/dl, IgM 126mg/dl. M-protein (IgG κ/λ type) を認めた. 骨髄にはは形質細胞が19.2%見られたが (免疫染色ではIg λ type), リンパ腫細胞の浸潤はなし. 両側胸水と傍大動脈周囲リンパ節の腫大あり. 骨病変は認められなかった. 腋窩リンパ節生検より Immunoblastic lymphadenopathy-like T cell lymphoma (IBL-like T) と診断された. 多発性骨髄腫と悪性リンパ腫 (IBL-like T) の合併と診断し, CHOP療法 (50%量) を開始した. 悪性リンパ腫がほぼ寛解を得た11月頃より骨髄腫の骨病変が出現した. 2000年1月より骨髄腫に対してMCNU-VMP療法を施行したところ骨痛は軽減した. しかし3月 Herpes zoster の全身感染症による多臓器不全, DICを併発し死亡した. 悪性リンパ腫と多発性骨髄腫の発症がどのように係わっていたかは不明であるが, 稀な症例と考え報告した.

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