日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
閉塞性動脈硬化症, 大動脈瘤を有する女性患者の頸動脈超音波所見
金 京子岩本 俊彦小山 哲央杉山 壮高崎 優
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2000 年 37 巻 3 号 p. 239-244

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抄録

閉塞性動脈硬化症 (ASO), 大動脈瘤 (AA) を有する女性患者の頸動脈における変化を明らかにする目的で, その超音波断層所見を検討した. 対象のASO群は ankle pressure index 低値 (0.9未満) の26例で, Fontaine 臨床病期分類ではII度が, 血管撮影 (12例に施行) では大腿動脈閉塞が多かった. 一方, AA群はCT, 血管撮影より診断された31例で, 腹部AAが多かった. 対照群にはASO, AAいずれもない38例を用いた. これら全例にBモード超音波断層検査を施行し, 頸動脈病変の有無, 性状, 血管径, 血管壁厚を評価した. 病変は狭窄, 閉塞の他, 内膜-中膜複合体の厚み (IMT) が2.1mm以上の隆起性病変 (plaque) を陽性とした. 各群の平均年齢は76.3歳, 73歳, 74.6歳と差はなく, ASO群では糖尿病, 脳血管障害の既往が, AA群では虚血性心疾患が多くみられた. 超音波断層所見では, 頸動脈病変がASO, AA, 対照群の各々91%, 73%, 26%にみられ, ASO, AAの血管疾患群で有意に多かった. 特に両側性の頸動脈病変はASO, AA群で過半数を占め, これらの殆どは plaque であった. 血管径はAA群で他の2群より有意に大きく, 一方, 血管壁厚は血管疾患群が対照群より有意に大きかった. 重回帰分析の結果, 血管疾患, 喫煙が血管病変に, 年齢, AA, 血管壁厚が血管径に, 年齢, 血管疾患, 血管径が血管壁厚に影響していた. 以上より, 女性にみられるASO, AAでも高頻度に頸動脈病変を伴い, 粥状硬化性変化は全身広範に及んでいた. したがって, これらの血管疾患では多臓器の血管病変をきめ細かく評価し, 臓器循環障害の合併に注意する必要があると考えられた. また, AAでは頸動脈の拡張性変化が特徴的であり, 動脈壁中膜の萎縮が系統的に生じている病態が示唆された.

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