日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
70歳まで良好な経過を示している高齢者 Eisenmenger 症候群の1例
田中 裕之長嶋 淳三信岡 祐彦粟屋 透小澤 泰典柴本 昌昭足立 久信三廼 信之三宅 良彦村山 正博
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2000 年 37 巻 12 号 p. 1004-1008

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抄録

症例は70歳, 女性. 1959年, 32歳時に他院で心室中隔欠損症・Eisenmenger 症候群と診断され手術適応なしと判定された. 1984年, 60歳時に当院に転医し以後70歳の現在まで外来通院を続けている. この間 NYHA 心機能分類は第II-M度で経過しており, 心不全による入院歴はない. 血液検査所見では, 赤血球数535×104/mm3, ヘモグロビン値17.29/dlと軽度の多血症の所見を認めた. 断層心エコー図では左室の圧排, 扁平化がみられ, 三尖弁逆流から推定した右室収縮期圧は105mmHgであった. 本症例の場合, 心エコー・超音波 Doppler 所見より, 右室圧は左室圧とほぼ同程度に上昇していると考えられることや, 心室中隔欠損孔を通過する右→左シャントの出現時相などから血行動態的には比較的重症の肺血管閉塞性病変を合併した Eisenmenger 症候群と考えられた. 本症例の経過が比較的良好であった要因として多血症の程度が軽度であり, 合併する肺血管閉塞性病変の進行が緩徐であったことが推察された.

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