日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
右季肋部側背部持続痛にて来院し胆石発作と解離性大動脈瘤の鑑別が困難であった1例
尾形 靖一郎高木 明彦小池 淳樹風間 暁男
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1999 年 36 巻 11 号 p. 822-825

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抄録

症例は70歳, 女性. 主訴は右季肋部側背部持続痛. 問診から胆石症を過去に指摘されていることと, Murphy 徴候が見られたことより, 胆石症による急性胆嚢炎を疑った. 腹部超音波検査を施行し, 胆石が胆嚢管に嵌頓しているように見えたが, 急性胆嚢炎で見られる胆嚢壁の肥厚は見られなかった. 腹部単純CT検査では解離性大動脈瘤も認めた. しかし, これらが急性のものか陳旧性のものか鑑別しうることは出来ないため, 正確な診断とその加療のために近隣する高次医療施設に搬送. 経時的な血液生化学検査と腹部造影CT検査を施行することにより, 胆石症による急性胆嚢炎を否定でき, 血栓閉塞型の急性解離性大動脈瘤 (Stanford classification type B) と診断し得た. 前期高齢者では異る疾患でも類似した臨床症状で発症することがあり, 鑑別には注意深い診察と近隣する高次医療施設との連携が重要だと考えさせられた症例であった.

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