日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
MDSによる高齢者の医療・看護・介護の評価と向上1.
診断の実情と痴呆における問題点
近藤 喜代太郎志渡 晃一加藤 隆正大浦 武彦峯廻 攻守中川 翼阿蘇 貴久子大西 由紀子岩坂 信子川畑 雅之
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1999 年 36 巻 9 号 p. 631-637

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抄録

2つの高齢者医療施設の入院患者について, MDS (Minimum Data Set) を約5年間, 4カ月毎に記録した. 初回記録は計2,461名について得られた. MDSは要介護患者の状態を約360の「トリガー項目」で記録し, 18の領域に問題があるかどうか検出し, さらに種々の指数によってその患者の特性などを評価する方法で, 米国のナーシングホームの処遇向上のため導入が義務化され, 各国で用いられている.
分析に先立ち, 2院の一方である西円山病院の診断の実情を調べた結果,
1) 痴呆以外の疾患ではほぼ満足できる水準にあった.
2) MDSの「診断と症状」の構成は日本の実情に沿わず, また医療・看護・福祉の総合化を求める場合, 不足・不適切な点があった.
3) 痴呆の診断には不充分な点があり, 仮性痴呆との鑑別不充分, アルツハイマー病の過剰診断などの傾向があり, とくにビンスワンガー病, 多発梗塞性痴呆など, 脳卒中発作の乏しい血管性痴呆がアルツハイマー病とされる傾向が強かった. その他の血管性痴呆の診断にも若干の不正確があった.
診断の実情が明らかになったので, その点を補正しつつ, この資料を多角的に分析し, 高齢者の施設ケアで医療・看護・介護の総合的な水準向上にどう活用するか, さまざまな面から検討する.

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