日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
若年発症の一側上肢筋萎縮に両手振戦を合併した高齢男性例
勝岡 宏之三森 康世原田 暁北村 健黒川 勝己中村 重信
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1999 年 36 巻 4 号 p. 279-283

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抄録

症例は現在75歳の男性. 25歳頃右手, 前腕の筋萎縮, 筋力低下を自覚した. 症状は進行し, 停止した. 40歳頃に右手のふるえが出現した. 左上肢の症状はなく, 歩行も問題ない. 現在, 両側感音性難聴以外, 脳神経領域に異常なし. 右手, 前腕に著明な筋萎縮を認める. 徒手筋力テストでは右上肢末梢優位に低下があり, 下肢には筋力低下を認めなかった. 握力は右0kg, 左25kg. 右優位の両手の姿勢時振戦を認めた. 腱反射は上肢で減弱, 下肢は正常. 表在感覚は正常で, 振動覚は上下肢とも軽度低下していた. 針筋電図は右上肢および左上肢の一部で慢性脱神経所見を認めた. 上肢感覚神経伝導検査, 短潜時体性感覚誘発電位は正常であった. 頸髄MRIでは頸椎症性変化, 第5,6頸椎間と第6,7頸椎間での脊椎管狭小化, 脊髄の扁平化を認めた. 振戦の周波数は両側とも7Hzであり, 肢位の変化により変動し, 荷重負荷後に周波数, 振幅ともに減少した. 本例は加齢変化に伴う修飾はあるものの平山病と診断した. 同病の病態を考える上で重要な症例である. また本例の振戦は増強した生理的振戦の特徴を有していた.

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