日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
Tamoxifen 投与中にトリグリセリドの著増を認めた1例
平良 美香高須 信行小宮 一郎
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1998 年 35 巻 11 号 p. 858-860

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抄録

症例は71歳, 女性. 昭和44年NIDDM, 高脂血症 (T-chol 300mg/dl, TG 300mg/dl) と診断され, SU剤, クロフィブラート系抗高脂血症剤を開始された. 平成元年, 左乳癌に定型的乳房切除術を施行. 術後補助療法として, tamoxifen および fluorouracil の内服を開始された. 平成7年, クロフィブラート系抗高脂血症剤の自己中断に伴い, TG 2,106mg/dlと著増を認め, 精査目的に当科入院. Tamoxifen およびfluorouracil を中止したところ, TG 490mg/dlと改善したため, 両薬剤の副作用が疑われた. その後, 血糖コントロールが安定した時点で, tamoxifen の再投与を行ったところ, TGは581mg/dlに上昇し, リポ蛋白分画は同様なパターンを認めており, 原因として tamoxifen が考えられた. その際, 肝性リパーゼ活性は0.228から0.164μmol FFA ml/minへと低下し, 一方 sex hormone binding globulin は110から130μg/mlへと増加を認め, estrogen 投与後と類似した状態であった.
Tamoxifen は, 乳癌組織において抗 estrogen 作用を呈し, 抗腫瘍効果をもたらすが, 同時に弱いながら estrogen 作用も有している. 本症例では, この estrogen 作用による肝性リパーゼ活性の低下, TG合成亢進等が著明な高TG血症の原因と考えられた.

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