日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
名古屋市在住の百寿者に関する社会医学的および医学的研究
稲垣 俊明新美 達司山本 俊幸橋詰 良夫荻原 雅之水野 友之稲垣 亜紀菊地 基雄
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1996 年 33 巻 2 号 p. 84-94

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抄録

1992年12月より1993年5月までの期間に, 名古屋市に在住の100歳以上の高齢者 (以下百寿者と略す) 36例 (男10例, 女26例, 平均年齢101.4歳) に対して, 生活歴の聴取, 老年者の総合的機能評価法, 医学的検査を施行し, その実態調査を行った. 尚, 性格検査は老人施設の62~93歳の高齢者50例を対照群とした. 血液検査, 生化学検査, 免疫検査は老人施設に入所中の百寿者14例および対照群として特別養護老人ホームに入所中の70~99歳の高齢者202例を選択し検討した.
1) 百寿者に高率にみられたものは食生活の注意, 飲酒・喫煙の制限, 肉体活動を必要とする職業であった. しかし, 百寿者の生活自立例と生活介助例ではそれらの項目に有意差がみられなかった. 痴呆は65.6%にみられた.
2) 百寿者に関する各種指標の相関では, 長谷川式簡易知能評価スケール (以下HDSと略す), 改訂長谷川式簡易知能評価スケール (以下HDSRと略す), 日常生活動作能力 (以下ADLと略す), 身体情報機能, 社会生活は各項目間でそれぞれ正の相関を示した. 生活自立例と生活介助例の間で有意差がみられたものは, 生活自立例では老人施設で生活している症例が低率, 疾患の個数が低値, 脳出血・脳梗塞および痴呆はなく, 収縮期血圧は高値, HDS, HDSR, ADL, 身体情報機能, 社会生活の項目は高値であった.
3) 加齢にともない血液検査値は赤血球数, ヘモグロビン濃度, ヘマトクリット値が有意な負の相関を示した. 生化学検査値はアルブミン, 血清総蛋白, 総コレステロール, LDL-コレステロールが有意な負の相関, クレアチニン, 尿素窒素, 尿酸が有意な正の相関を示した. 免疫検査値では細胞性免疫能はT細胞のうちヘルパーTリンパ球の絶対数が有意な負の相関, 液性免疫能はIgAが有意な正の相関を示した.

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