1993 年 30 巻 8 号 p. 709-713
慢性肝障害を有し, 頭部MRIT1強調画像上, 両側基底核に高信号像を呈した高齢者の肝性脳症患者2例を経験した. (症例1) 78歳, 女性. 肝硬変, 肝性脳症にて某院入院の既往を有する. 全身倦怠感, 食欲低下が出現し当院入院となった. 脳波上徐波, 一部三相波様徐波を認め, 頭部MRI上T1強調画像にて両側淡蒼球と被殼に高信号像を認めた. (症例2) 71歳, 女性. 抑うつ状態, わけのわからない事を言うなどの症状が出現し, 某院にてC型肝炎と診断された. その後, 抑うつ症状が続くため当院受診. 脳波で三相波および徐波がみられ, 頭部MRI上T1強調画像にて両側淡蒼球, 被殼および視床下部に高信号像を認めた. これらのMRI所見は, 肝機能障害に起因する代謝性および病理学的変化を反映し, 肝性脳症の診断上有用となることが示唆された.