日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
肺腫瘤で発症し多彩な免疫異常を合併した高齢者非ホジキンリンパ腫の1例
坂野 章吾仁田 正和高田 勝利長谷川 良平新美 達司山本 俊幸
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1993 年 30 巻 6 号 p. 506-510

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抄録

症例は85歳, 女性. 全身倦怠感, 胸部不快感のため1991年6月, 入院した. 胸部X線で縦隔リンパ節腫脹はなかったが, 両肺野に2, 3個の肺腫瘤陰影を認めた. 転移性肺癌が疑われ精査を行ったが原発巣は認めなかった.
溶血性貧血のため末梢血のHbは8.79/dlであった. 寒冷凝集素価増加, 血清補体値低下, 抗核抗体陽性, および免疫電気泳動により単クローン性ガンマグロブリン血症 (IgM-κ) を認めた. IgM-κ型Mタンパク血症, 寒冷凝集素症を合併した自己免疫性溶血性貧血と診断された. ステロイド剤の投与により, 一時的に溶血性貧血は改善したが, 出血性胃炎のため死亡された. 剖検により主として左上葉に腫瘤を認めたが縦隔リンパ節腫脹は認めなかった. 肺腫瘤の組織診断は免疫組織染色より原発性マクログロブリン血症ではなく非ホジキンリンパ腫 (びまん性中細胞型) と診断された. 高齢者で多彩な免疫異常をもち肺病変があるときには悪性リンパ腫などB細胞性リンパ増殖性疾患を考える必要がある.

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