日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
CT画像解析による高齢者腹部脂肪分布と血清脂質との関係
今村 敏治加納 広子新 弘一近喰 櫻大澤 要子高崎 優
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1993 年 30 巻 2 号 p. 123-129

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抄録

高齢通院患者の腹部CT画像より皮下脂肪量と腹腔内脂肪量を二次元画像解析装置を用いて測定し, 血清脂質との関連を検討した. 1989年4月より1991年6月までの間に当科受診し腹部CTを施行した65歳以上の通院患者で, 悪性腫瘍, 高脂血症, 肝疾患, 糖尿病が除外された男性13例, 女性18例の計31例 (平均年齢男性74.8歳女性75.4歳) を対象とした. 血液生化学的所見, Body mass index (BMI) には男女間で有意差は無かった.
腹部CT画像より腎臓部を中心とする1cm間隔の6スライスのCTフィルムを計測の対象とした. 腹部の皮下脂肪, 及び腸間膜脂肪, 大網脂肪, 後腹膜脂肪よりなる腹腔内脂肪の計測は, CTフィルム処理後ライズ社製二次元計測処理プログラム“EM-1”を用いてタブレット上で各面積を測定し, 腹腔内脂肪 (V) と皮下脂肪 (S) の面積を求め評価した. 血清脂質は総コレステロール, 中性脂肪, HDL-Chを同時に測定し, 以下の結果を得た. (1)男性で (V) の割合が女性より高い傾向にあり, 女性では (S) の割合が男性より有意に高かった. (2)腹腔内脂肪対皮下脂肪比 (V/S) は男性が女性より有意に高値を示した. (3)V/Sと血清脂質との間には, 全症例で中性脂肪と有意な正の相関 (r=0.5644, p<0.01), HDL-Chと有意な負の相関 (r=-0.5267, p<0.01) がみられた. 男性例ではHDL-Chと有意な負の相関 (r=-0.5080, p<0.05), 中性脂肪とは正の相関を示す傾向にあった. 女性例では中性脂肪と有意な正の相関(r=0.5280, p<0.05), HDL-Chと負の相関を示す傾向がみられた.
V/Sと循環器疾患, 代謝性疾患との関係が最近注目されている. 今回の検討より高齢者ではV/Sは血清脂質と相関を有しており高齢者の病態を考察する際に重要となり, さらに高齢者の栄養評価の一項目として考慮する必要があると考えた.

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