日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
80歳以上の高齢者における前立腺肥大症手術療法の検討
本田 了沖 守秋元 成太
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 30 巻 2 号 p. 112-115

詳細
抄録

1983年1月から1988年12月までの6年間に当院に於いて前立腺肥大症手術治療を施行した80歳以上の高齢者35例について, 臨床的検討をおこなった. さらに1978年1月より1982年12月までの5年間にわれわれの施設で手術を施行した80歳以上の39例との比較も試みた.
平均年齢は83.2歳で, 主訴は頻尿が74.3%と最も多く, 尿閉を54.3%が経験していた. 術前合併症として循環器系の異常が多くみられたが, 手術に際し生命に危険を及ぼしたものはなく, 84.6%が硬膜外麻酔, 15.4%が脊髄麻酔下に施行された. 手術方法はTUR-P (Transurethral Resection of the Prostate; 経尿道的前立腺切除術) 26例 (74.3%) と開腹術9例 (25.7%) で, 以前の当施設での集計 (TUR-P62%, 開腹術38%) に比しTUR-Pが増加する傾向がみられた. 各手術法を比較すると平均手術時間はTUR-P 107.5分, 開腹術137.4分, 平均切除重量はTUR-P 17.9g, 開腹術58.4g, また平均輸血量はTUR-P 415ml, 開腹術844ml, 平均術後カテーテル留置期間はTUR-P 5.1日, 開腹術10.8日, 平均手術後在院日数はTUR-P 12.6日, 開腹術19.3日となっていた. また術後合併症に関して, 各手術法とも特に大きな問題はみられなかった. その他, 潜在癌が1例 (3.0%) に認められた.
80歳以上の高齢者における前立腺肥大症手術療法について, 高齢者であっても重篤な合併症がなければ無理なく施行できるといって良く, 特に手術時間や輸血量, 術後離床までの期間といった点でTUR-Pの方が開腹術に比し優れていると考えられた. その一方でTUR-Pが困難な症例もあるため, 今後とも開腹術の必要性は認めざるを得ない. しかし将来的にTUR-Pが選択施行される傾向はますます強まると予測され, 泌尿器科医にとってTUR-Pの手技に習熟する必要性のあることが示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top