日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
急激なヘマトクリット値の上昇により脳梗塞及び筋由来血清酵素の高値を示した二次性多血症の一例
岡本 潔久保田 一雄川田 悦夫倉林 均白倉 卓夫
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1991 年 28 巻 5 号 p. 693-696

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抄録

症例は70歳の男性で, 1989年12月発熱と呼吸困難を主訴に入院. 患者は既に4年前に肺線維症による二次性多血症の診断を受け, 以後繰り返し潟血療法を受けて, ヘマトクリット (Ht) 値は44.5~62.9%に維持されていた. 患者は入院直後より激しい下痢を併発しHt値は61.5%に達した. 入院3日目午前1時30分頃, 意識障害が出現しHt値は78.5%に急増し, 同時に筋由来のLDH, CPK, アルドラーゼ, ミオグロビンの増加も認められた. 直ちに600mlの瀉血と1,500mlの輸液が行われ意識レベルは改善したが, 構音障害と片麻痺が顕著になった. 同日早朝のHt値は59.4%に低下していた. 症状発現後74日目に施行した頭部CT及び15カ月後に施行したMRI検査では明らかな病巣を確認できなかったが, 臨床的に脳梗塞と診断された. Ht値または血液粘度の急激な上昇は脳梗塞の引き金となる可能性があり, 特に老年者ではその予防にHt値の適正な管理が望まれる.

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