日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者本態性高血圧症患者の左心機能の特徴
非観血的検査による検討
佐藤 正和内山 隆久坂巻 達夫佐藤 裕一尾作 明雄小島 雅敏成宮 一敏柴山 修介藤林 陽三松山 真記子小山 純生梶原 長雄
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1989 年 26 巻 5 号 p. 514-520

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抄録

高齢者本態性高血圧症の左心機能の特徴を検索するために, 65歳以上の高齢者27名 (高血圧症患者20名と正常血圧症7名) と40~59歳の中年者46名 (高血圧症患者34名と正常血圧症12名) を対象として, 心機図法及び心エコー図法を用いて心収縮能および心拡張能を検討した. 正常血圧者では年齢と血圧, 左室の壁厚, II-RF時間, A/E比には正の相関を認めたが, ET/PEP, EF等の収縮機能の指標には相関はみられず, 加齢により, 拡張機能は次第に低下するが, 収縮機能は正常域に保たれると考えられた. 高齢者本態性高血圧症患者では, 拡張期血圧の上昇するに従って, 左室収縮機能は低下しA/E比は増高した. また中年本態性高血圧症患者と比較しても, A/E比の有意な増高が認められた. しかし, 中年高血圧症患者の場合とは異なり, 血圧の差と心胸比の拡大傾向を示す以外は左心機能の指標に高齢正常血圧者とは明らかな差が認められなくなった. これは, 高齢者では正常値の範囲が加齢による動脈硬化性変化の影響で中年者の正常値よりも広くなることと, 高齢者本態性高血圧症では様々な病態が混在し, 高血圧症としての明確な像を表わしにくくするためと考えられた.

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