日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
心筋梗塞の死因, 特に心破裂の変遷と治療浩の関係
戸田 源二松下 哲蔵本 築坂井 誠小田 修爾江崎 宏典服部 明徳大川 真一郎
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1987 年 24 巻 5 号 p. 457-462

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抄録

心筋梗塞患者の死因の変遷を剖検例にて検討したところ, 近年心破裂の頻度が減少する傾向にあるのに注目し, 心破裂と急性期の血行動態や治療法との関係について検討した.
昭和49年から昭和59年までの11年間, 剖検上心筋梗塞を有した574例を対象として死因および病理所見の検討を行った. その結果, 全剖検例に占める心筋梗塞の割合は19.3%でほぼ一定であり, 発症1カ月以内の例の94.5%は心死で占められた. 急性心筋梗塞 (AMI) に占める心自由壁破裂, 中隔穿孔, 乳頭筋断裂の割合は12.2%で心自由壁破裂のみの割合は9.5%であった. 発症から心破裂までの期間は発症後2日以内が82%を占め, 最長8日であった. 心破裂例の50%は前壁の大梗塞で占められた.
年度別では心破裂例は昭和56年から有意に減少した. そこで, 同期間内にCCUに入室したAMI 320例を対象として, 心破裂と急性期の使用薬剤や血行動態などについて検討した. 内訳は心自由壁破裂17例, 中隔穿孔6例, 乳頭筋断裂2例の計25例を破裂群, その他の295例を非破裂群とし, 破裂群にCCU以外の心自由壁破裂例を加えた38例を総破裂群 (男19例, 女19例, 平均年齢78.1歳) とした. その結果,心破裂の減少がみられた時期よりカルシウム拮抗薬を含む血管拡張薬や硝酸薬の使用頻度が増加しており, 総破裂群に比して非破裂群において有意に利尿薬 (χ2=5.84, p<0.05), 硝酸薬(χ2=9, 62, p<0.01), 血管拡張薬 (χ2=7.06, p<0.01) の使用が多いという結果が得られた. 急性期の血行動態や血圧に関しては破裂群と非破裂群とで有意差は認められなかったが, 心自由壁破裂の53%は Killip I群, 43%は Forrester I群で占められた.
我々の成績は, 心破裂の予防に対する減負荷療法の有効性を示す所見であるが, 後負荷のみならず前負荷の軽減も心破裂の予防に寄与していると思われる.

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