日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳血管撮影所見よりみた脳動脈硬化の危険因子
小嶋 俊一伊藤 敬一川上 倖司沓沢 尚之
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1976 年 13 巻 6 号 p. 393-399

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抄録

1969年より1974年の5年間に種々の愁訴にて脳血管撮影を施行されながら, 動脈硬化以外の器質的病変を指摘できなかった315例を対象に年齢・血圧・血清総コレステロール値と脳動脈硬化所見との関連を検討した. 脳動脈硬化所見は頚動脈撮影にて造影される動脈系を頭蓋外頚動脈・頭蓋内主幹動脈・頭蓋内小動脈の3部位に区分し, 狭窄及び管径不同の有無・範囲により動脈硬化の程度を3段階に分けた.
1) 頭蓋外頚動脈・頭蓋内主幹動脈・頭蓋内小動脈の各部位で, 当然ながら年齢は動脈硬化の主たる危険因子であることが認められた. 又, 頭蓋内主幹動脈は他の動脈系に比較し, 動脈硬化所見を指摘できる頻度が高く, 動脈硬化の好発部位と考えられた.
2) 各動脈系とも高血圧群で動脈硬化がより進行しているといえたが, 年齢別検討で推計学上有意差が得られたのは頭蓋内小動脈との関連を50歳台及び60歳台についてみた場合のみで, 高血圧は特に管径の小さな動脈系の硬化との関連が認められた.
3) 高血圧群では血清総コレステロール値の上昇と共に, 頭蓋外頚動脈及び頭蓋内主幹動脈硬化例の頻度は高くなった. 特に頭蓋内主幹動脈の硬化とコレステロール値の関連性は5%の危険率で有意であった. コレステロール値が210mg/dl以上の高血圧例では症例の26.5%が頭蓋内主幹動脈に25%以上の狭窄を合併しており,184mg/dl以下の例に比較し約5倍の頻度に達した. 非高血圧群ではコレステロール値と動脈硬化度との間に明らかな関連を見出すことはできなかった.

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