日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
内頸動脈 Siphon 部石灰化像の臨床的意義
北村 龍男伊藤 敬一沓沢 尚之
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1973 年 10 巻 4 号 p. 225-231

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抄録

頭部単純X線写真上, 内頸動脈 siphon 部にしばしば石灰化像を認めるが, その臨床的意義についての検討は少ない. 我々は, 特定地域の20才以上の全住民を対象とした集検の1,879名と, 入院患者750名に頭部単純X線撮影を行ない, siphon 部石灰化像の臨床的意義を検討した.
集検の成績より以下のような結論を得た.
1) Siphon 部石灰化像の出現頻度は4.5%で, この成績は欧米の成績とほぼ同様であった.
2) 加令により siphon 部石灰化像出現頻度の増加傾向を認め, 20~39才は0%, 40~49才は1.2%, 50~59才は6.3%, 60~69才は15.2%, 70才以上は30.0%であった. 男女間の頻度には差を認めなかった.
3) 頭痛, めまい, しびれ感の自覚症状は石灰化像出現頻度と関連性がなかった.
4) 最高血圧, 最低血圧の高い群では siphon 部石灰化像出現頻度が高かった.
5) 眼底所見の動脈硬化性変化は石灰化像出現頻度と関連性があった.
6) トリグリセライド値, リン脂質値は siphon 部石灰化像出現頻度と関連性があったが, コレステロール値, L/O比は関連性がなかった.
入院患者についての検討では次のような成績を得た. 石灰化像出現頻度は脳硬塞で明らかに高く29.9%であった. 高血圧性脳出血では16.0%であり, クモ膜下出血ではわずかに6.3%であった.
これらの結果は, siphon 部石灰化像はしばしば認められ, かつ脳血管障害とくに脳硬塞の予知にある程度の information を与えることを示している. それゆえ, 脳動脈硬化症の診断, 管理上頭部単純X線写真により siphon 部石灰化像を検討することは有意義である.

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