日本食品科学工学会誌
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技術論文
安定同位体分析と数値解析を用いた食品原材料としての地下水の起源判別
富山 眞吾井伊 博行上原 倫子脇田 隆茂
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2010 年 57 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

食品原材料となる地下水の品質管理の問題が起きており,地下水起源を水質特徴などの科学的根拠に基づいて判別する技術が必要とされている.本研究は,岐阜県瑞穂市で食品原材料として採水している地下水を対象に,水素・酸素安定同位体等を用いて起源の推定を試みた.水質は周辺河川水と同様の重炭酸カルシウム型であり,周辺河川水と比較して若干Ca2+とHCO3に富む傾向にある.水素・酸素同位体比から,地下水の起源は揖斐川や根尾川上流および近傍河川にあることが推定される.水理概念の妥当性評価と地下水流れの予測を目的として行った3次元数値モデルによる地下水流動解析では,根尾川上流域(濃尾平野に注ぎこむ地点)から岐阜工場近隣に至る範囲において河川水により地下水が涵養され,混合しつつ南方に向かって流下する地下水流れが予測され,水素・酸素同位体比と陽・陰イオン濃度から推定される地下水流れと整合的である.水素・酸素安定同位体分析と数値解析により得られた結果は従来の知見と矛盾せず,地下水起源の特定法としての可能性が示唆された.

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© 2010 日本食品科学工学会
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