日本食品科学工学会誌
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FT-IR/ATR法を用いた糖水溶液の赤外分光分析
亀岡 孝治奥田 知晴橋本 篤野呂 明美椎木 靖彦伊藤 健介
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1998 年 45 巻 3 号 p. 192-198

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抄録

食品のモデルとして糖水溶液を考え,糖水溶液の赤外分光スペクトルについて検討を行い,以下の糖水溶液の赤外分光分析に関わる基礎的知見を把握した.1. FT-IR/ATR法により,従来の透過法では測定が困難とされていた中赤外領域における単糖・二糖類の赤外分光スペクトルを取得し,FT-IRIATR法の有効性を示した.2. 指紋領域におけるスペクトルパターンは各糖に対して固有であることが分かり,糖の種類別定量分析に応用可能であることを示した.3. 理想溶液の性質を示す糖水溶液の検量線は,直線性を示すことが分かった.また非理想溶液の性質を示す糖水溶液の検量線は,アルコールC-OH伸縮の吸収帯の検量線のみ非直線性を示した.これは糖と水の相互作用が,OH基の吸収帯に大きな影響を及ぼしているためと考えられる.4. 非直線性を有する検量線を活量係数を用いて関数化し,非直線性を有する検量線も定量分析に応用可能であることを示した.5. 指紋領域のスペクトルによる検量線作成に最も有効である波数を決定するために,指紋領域のスペクトルの波形分離を行った.この結果,吸収帯の中に強度が最大で,他の吸収の影響を受けにくい吸収帯が存在することが示された.また,定量分析にはこの吸収波数での検量線の利用が最も有効であることが分かった.

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