物理探査
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解説
小型無人航空機(UAV)による物理探査手法について
上田 匠光畑 裕司大熊 茂雄
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2021 年 74 巻 p. 93-114

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抄録

 無人(自律)または有人遠隔操縦による航空機,地上車両,海上・海中用移動体(いわゆるドローン)の中で,本稿では小型の無人航空機(UAV)を利用した物理探査について,歴史,分類,弾性波・磁気・電磁・放射能・地中レーダの各探査での研究開発事例を紹介する。特に磁気・電磁探査は小型UAVの機動性・可搬性を活かしたUAV(ドローン)磁気/電磁探査とも言える新しい探査手法の研究開発が急速に進んでいる。まず,受動的探査である磁気探査はスカラー/ベクトル型の2種類の受信器(磁力計)に大別し,UAVの適用事例を紹介する。またUAV電磁探査は能動/受動的測定いずれも存在するため,送受信器の搭載方法別に4種類に分けて研究開発,適用事例を説明する。小型UAVによる物理探査では搭載測定装置の重量制限が測定データ精度や可探深度に影響する。また,バッテリー容量は飛行時間・距離,探査効率の制約となる。さらに,マルチコプター型では回転翼駆動時の電磁ノイズ,探査装置の搭載・吊り下げ飛行での揺動ノイズも考慮する必要がある。そして,安全かつ効率的な探査には熟練操縦士や地上要員が不可欠である。一方でUAVは有人飛行に比較して柔軟性のある飛行が可能であり,高い水平分解能や地形に沿った探査の可能性が高まる。また,自然災害,放射性物質・有害物質暴露などの危険に対する作業従事者の安全性で極めて有利である。加えて,有人探査が困難な急峻地形,湿地帯,環境保全地域などでの探査の可能性も広がる。そのためにも,物理探査技術の小型化・高精度化だけでなく省電力駆動などが今後より重要になる。また,大量データの取得が一般的となり,ソフトウェアの面でも迅速な処理やマッピングなどの可視化,そして最終的には深度情報を含む逆解析の確立が求められる。そのような中で,今後はUAV物理探査技術が新たな物理探査手法の一つとなっていくことが期待される。

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© 2021 社団法人 物理探査学会
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