物理探査
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論説
大規模自然災害時の物理探査学会の緊急対応とその評価
–東日本大震災時のいわき市における緊急調査を例に–
相澤 隆生内田 利弘
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2016 年 69 巻 3 号 p. 161-171

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抄録

 福島県いわき市では,2011年3月の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に関連して,炭鉱跡地で地鳴り,地下水の噴出,地面の陥没などの異常現象が発生した。それらに関する専門的な知見について,いわき市から物理探査学会に相談が寄せられた。学会では,理事会での議論を経て,緊急現地調査を実施することとなった。当初,調査は炭鉱跡地の災害を対象としていたが,2011年4月11日に福島県浜通りを震源とするマグニチュード (Mj) 7.0の地震(余震)が発生したため,調査対象は余震を発生させた活断層および被災箇所の状況調査へと拡大した。
 本稿では,物理探査学会が,今後,大規模自然災害の際に緊急災害対応を行うことを念頭に,2011年東日本大震災の際に,学会が被災地での緊急調査実施を決定したプロセス,現地の状況変化に伴って変更した実施内容とその経過等を整理し,レビューすることとした。また,調査の様々な成果が地元自治体および住民のニーズにどの程度応えることができたか等を評価するため,経済協力開発機構の開発援助委員会が定めた評価5項目に基づく事業評価を行い,成果および課題について明らかにした。さらに,今後,学会が行うことが考えられる緊急災害調査では,その都度,事業評価を行うことの重要性を指摘した。

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© 2016 社団法人 物理探査学会
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