本報告では,熱水探査に向けた現場型マンガン分析装置の送液ポンプの開発と,システムの小型化・省電力化を行い,熱水噴出域である鹿児島湾の若尊火口における実証実験の結果について報告するものである。昨今,世界的に資源の需要が逼迫し、有用金属元素の供給源として海底熱水鉱床への期待が高まる中で,新規熱水鉱床の探査手法の確立が急がれている。熱水の指標となるマンガンの濃度異常を検知するために,これまでにも現場型マンガン分析装置が開発されてきたが,送液ポンプの大きさおよび消費電力量が制約となり,探査に用いることができるのは搭載比較的大きなプラットフォーム (例えばしんかい6500),もしくは有索の曳航体に限られていた。これらの送液ポンプに変わり,トリバルブポンプによる送液システムの開発,および送液系のマニホールド化を行なうことで,低消費電力で安定した送液速度を確保し、小型AUVへの搭載も可能な測器の小型軽量化を達成した。本システムを用いた鹿児島湾若尊火口における現場実証試験では,熱水噴出の強弱によるマンガン濃度の時系列変動を検出し,今後,小型AUVなどを用いた新規熱水鉱床探査に加えて,熱水鉱床掘削時の環境影響評価などにも応用できるものと期待できる。