日本畜産学会報
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農地保有合理化事業の適用による畜産的土地利用の現状と諸課題
300ha共•民有林買収プロセスを事例として
小澤 壯行
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1999 年 70 巻 9 号 p. 226-236

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抄録

農地保有合理化事業の適用による畜産的土地利用の現状と課題について,茨城県大子町における公社営畜産基地建設事業の適用事例を基に整理を行った.この結果,草地造成•開発に伴う合理化事業適用の意義については, (1) 他事業との組み合わせを行うことにより,農地の面的集積が円滑となること, (2) 農業公社の土地保有機構の活用による畜産的土地利用の計画的,効率的運用が可能となること, (3) 公社保有期間の存在による農家の資金負担軽減化が図れること, (4) 公社媒介による「信用力」強化が図られることが明らかになった.さらに,農地集積に関わる組織的要因については, (1) 個人依存型,(2) 組織利用型および(3)新規組織設立型の3類型が存在した.また,合理化事業適用による畜産的土地利用において,特に農地集積後の課題として, (1) 旧地権者と新規地権者との関係悪化, (2) 既存山間造成草地の利活用の滞り, (3) 経営環境の悪化による一部農家における償還計画の頓挫等が指摘される.これらを踏まえて今後の畜産的土地利用の推進を図る際には,従来にも増して周辺耕種農家および環境問題を含めた地域対策を重視することが肝要である.

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