鉱物学雜誌
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金デコレーション法による粘土鉱物の表面マイクロトポグラフ観察とその技術的問題
北川 隆司
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1997 年 26 巻 4 号 p. 215-220

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抄録

 金デコレーション法による粘土鉱物の結晶表面マイクロトポグラフを透過電子顕微により観察する方法と,実際に筆者の研究室で行っている作業手順を示した.ここに記した手順をそのまま実行しても,粘土鉱物の結晶表面に存在するステップに金が選択的に必ず付着するとは限らない.それにはかなり偶然的要因がある,しかし,上述の方法を実行すれば成功する確率は高くなる.実際筆者の研究室では3割の確立で成功している.成功させるキーポイントは試料を加熱する温度である.また,その結果得られた表面マイクロトポグラフにはさまざまなパターンが観察される.それらのパターンが全て成長模様を示しているのではなく,劈開面をはじめとし,積層,結晶どうしの重なりなどによる模様が観察される,それらの模様はしばしば成長パターンとまぎらわしい場合が多い.また,成長模様であっても,成長中心から成長ステップまで全てが完全に観察される場合はまれである. 金デコレーション法により観察される粘土鉱物の成長模様は,ほとんど円形あるいは多角形の渦巻き成長パターンである(Fig.15).しかし,まれに二次元成長を示すと考えられる模様が観察されることもある.デコレーション法による粘土鉱物の結晶成長機構に関しては砂川らの研究グループやBarronnet(1972)によりほぼ解明されている.しかし,粘土鉱物に使用するデコレーション法は結晶成長理論を使った地質学的あるいは資源地質学的問題として粘土鉱物生成環境の解明など,今後ひろく応用分野が期待される.

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