自文化を離れ、40 年以上という長期間異文化という特殊な環境で生活することによって、どのように個人のパーソナリティー、価値観、民族意識が影響を受けるのかを明らかにしたいと考え、アメリカ合衆国サンフランシスコで長期滞在するある日本人女性のライフヒストリーの聞き取り調査を行った。研究・分析方法は、ライフヒストリー法を使用した。
本研究の対象者である長期滞在の日本人女性は日本に住んでいた頃から、自己・自我が強く確立されており、確固たる自身の意見を持っていた。女性は長期滞在によりアメリカ生活に適するように自己主張が可能となり、活動的な自己を形成していった。同時に、言葉の違い、人種差別の経験、コミュニケーションの難しさを通して、日本とアメリカの相違を認識していた。また、自身を日本人であるという意識が強くなっていくにつれ、日本文化を子どもや孫に伝えたいという意思が強くなっていったことが明らかになった。