日本交通科学学会誌
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脳卒中罹患後のタクシー運転再開と望ましいリハビリテーションについての検討
大場 秀樹井上 拓也平野 正仁武原 格渡邉 修一杉 正仁
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2017 年 16 巻 2 号 p. 46-54

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抄録

タクシー運転者の現職復帰に必要なリハビリテーション(リハ)プログラムを明らかにさせること、および現職復帰のプロセスを検討することを目的に、法人タクシー運転者で脳卒中後に現職復帰した5症例を検討した。高次脳機能検査として、Mini Mental State Examination(MMSE)、Kohs立方体組み合わせテスト、Trail Making Test AおよびB、Paced Auditory Serial Addition Task 2秒および1秒、Behavioural Inattention Test(BIT)、Wechsler Adult Intelligence Scale Ⅲ、Wechsler Memory Scale-revised(WMS-R)を用いた。運転の評価には、パソコン上で実施する簡易型ドライビングシミュレーター(DS)、および実車に近いDSを用いた。全例でMMSEは28点以上、BITは満点であり、認知症や半側空間無視の患者はいなかった。WMS-Rで、先行研究による暫定基準値を1例のみ下回る結果であったが、その他の高次脳検査は全例で暫定基準値を満たしていた。リハのプロセスでは、一般的な高次脳機能訓練に加えて簡易型および実車に近いDSを用いた運転訓練が行われた。全例で退院後も外来リハによって継続的に運転能力の確認がされ、2例では実車訓練も行われた。職場での職務復帰のプロセスでは、まず非運転業務から再開し、段階的に運転業務へと移行すること、さらに復職後に夜間業務を減らすなどの業務量軽減が望ましいと考えられた。すなわち、個人の運転能力に加え、職場の理解と配慮が必要と考えられる。脳卒中に罹患したタクシー運転者の復職では、主治医、リハスタッフのみならず、職場や自動車教習所も含めた連携が重要である。

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© 2017 一般社団法人 日本交通科学学会
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