鉄と鋼
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18Niマルエージ鋼の水素脆性におよぼす未再結晶溶体化処理の影響
野末 章栗林 一彦大久 保忠恒堀内 良
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1987 年 73 巻 16 号 p. 2259-2266

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抄録

18%Niマルエージ鋼の水素脆性試験において,き裂進展速度と応力拡大係数の関係における,領域IIのき裂進展速度におよぼす旧オーステナイト(γ)粒径の影響と,未再結晶溶体化処理の効果について検討を行い,以下のことを明らかにした.
逆変態γの再結晶温度以上で溶体化処理した試料(再結晶溶体化処理材)の領域IIにおけるき裂進展速度は,旧γ粒径の減少とともに低下した.逆変態γの再結晶温度以下で溶体化処理した試料(未再結晶溶体化処理材)では,粗粒鋼のき裂進展速度が著しく低下し,旧γ粒径に対する依存性はほとんどなくなる.未再結晶溶体化処理による水素脆性感受性の低下は,旧γ粒径の減少に伴うブロック幅の減少の場合と同様であり,ブロック境界面積の増加による水素の旧γ粒内でのトラップに起因するものと結論された.
本研究の一部は,昭和59年度文部省科学研究補助金奨励研究(A)を受けて行われた.

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