歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutansの増殖に及ぼす酸素の影響
嶋本 達家福井 一博児玉 孝雄下野 勉太田 寛行加藤 慶二郎
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1990 年 32 巻 1 号 p. 10-19

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抄録

齲蝕の発生に深く関与するプラーク内の細菌叢では絶えず酸素に触れ, 酸素に対し防御できる細菌は初期歯垢内で優勢種となる可能性がある。これらの観点からS. mutans Ingbritt株の酸素耐性機構を調べる目的で, グルコース制限下での増殖に対する酸素の影響を検討した。増殖速度は, 好気条件下では, 嫌気条件の場合に比べて若干の低下 (30%) はあったが, 増殖収率は, ほぼ同じ値 (35g/mol) を示した。嫌気および好気培養細胞の過酸化水素感受性とグルコース依存の酸素代謝諸活性のうち, スーパーオキサイドの産生とスーパーオキシドジスムターゼ活性に差異はみられなかったが, 好気培養細胞の過酸化水素還元活性は, 嫌気培養細胞の約2倍であった。また, 好気培養細胞は過酸化水素を添加した嫌気培養において, 嫌気培養細胞より過酸化水素に対して耐性がみられた。これらの結果から, S. mutans Ingbritt株の酸素耐性機構に高いパーオキシダーゼ活性が一翼を担っていることが示唆された.

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