日本ダニ学会誌
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原著
ブドウ園でのカブリダニ類保護の点からみた緑肥用ダイズでのカブリダニ類と食植性アザミウマ類の発生状況
望月 雅俊
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2014 年 23 巻 2 号 p. 79-89

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抄録

ブドウの重要害虫であるチャノキイロアザミウマに対する捕食性カブリダニ類を保護する植生管理を行うため,果樹園での緑肥植物として古くから知られる緑肥用ダイズ(品種,黒千石)におけるアザミウマ類と捕食性天敵カブリダニ類の発生状況を調査した.茨城県つくば市の畑地では2004年には,キイカブリダニが8〜9月に増加し,採集された5種の中で90%を占める優占種となった.また広島県安芸津のブドウ園内では2005から2006年に7種類のカブリダニが得られ,キイカブリダニは2005年8月には50%を占めたが,その後はコウズケカブリダニとニセラーゴカブリダニが優占種となった.アザミウマではダイズ,ハラオビノ,ダイズウスイロアザミウマの3種が主要種として採集されたが,チャノキイロアザミウマは記録されず,ブドウ園の緑肥用ダイズは本種の増殖源とならないことも示された.緑肥用ダイズではカブリダニ類の密度が高まるが,これを樹下に栽培したブドウでは,ニセラーゴ,コウズケカブリダニの比率が高く,ダイズ栽培を伴うとブドウ樹上のカブリダニ密度が高まった.以上から緑肥用ダイズのブドウ園での栽培にはカブリダニ類を温存する効果が期待された.

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© 2014 日本ダニ学会
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