ポリオウイルス(PV)のヒトにおける主要な経路には,PVが経口で取り込まれた後ウイルス血症を経て血液脳関門を越え中枢神経系内へ侵入する経路と,骨格筋へ投射している神経軸索を介してPVが直接中枢神経系内へ侵入する神経経路が知られている.ヒトにおいてはPV経口感染が成立するが,経口感染が成立する動物モデル系は見いだされていなかった.我々は,1型インターフェロン(IFN)受容体遺伝子欠損ヒトPV受容体(hPVR/CD155)発現トランスジェニック(Tg)マウスにおいて経口感染が成立する系を確立した.また,IFN受容体遺伝子が欠損していないCD155発現Tgマウスにおいても経口感染が成立するPV変異株を分離した.ウイルス血症後,PVが血液脳関門を透過する機構を解析したところ,トランスフェリンの血液脳関門トランスサイトーシス経路と共通した機構を利用してPVが血液脳関門をトランスサイトーシスされている可能性が示唆された.一方,PVの神経経路については,運動神経初代培養細胞において,PVがCD155と同一小胞で逆行性輸送され,その輸送系には細胞質ダイニンが関与していることを証明することができた.