ウイルス
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総説
3. 人獣共通感染症
山田 章雄
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2004 年 54 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

現在ヒトに感染することが知られている感染症は分類上の種で1415に上る. このうち868種 (61%) が人獣共通感染症であるとされている. すなわちヒトが感染する病原体の半数以上はヒト以外の動物にも感染する. また, 新興感染症の75%は人獣共通感染症である. 人獣共通感染症の病原体のうちの33%がヒトからヒトへ感染しうる. 公衆衛生上の問題となる病原体は一端動物からヒトに伝播した後, ヒト間でさらに伝播できるこの33%の病原体であるといえる.
感染症が新たに勃興してくる原因として地球人口の激増, 生態系への干渉, 航空機輸送の発達に伴うヒト, 動物, 物の国際間移動の高速化, 気候の変化などがあげられる. 野生動物が介在する感染症は生態系との関わりが深く, たとえ僅かであっても環境の変化がエコロジカルニッチに与える影響は無視しがたく, ニッチを利用する動物の生態系が撹乱されることにつながる. 生態系が撹乱すると例えば捕食動物が減少し, 様々な病原体を保有している可能性のある齧歯類などが異常繁殖し, 結果的に齧歯類に由来する感染症が発生することになる.

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© 2004 日本ウイルス学会
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