2017 年 73 巻 2 号 p. I_1483-I_1488
津波波源の不確実性や堤防の減災効果の評価に向けて,高速に津波浸水範囲を評価可能な手法を開発した.旧来のレベル湛水法に潜り越流と戻り流れ状態の計算を付与すると同時に,海岸低平地のデータベースを予め作成することにより広域の沿岸地域に適用する枠組みを構築した.モデルの妥当性を検証するため,2011年東北地方太平洋沖地震のデータを用いて,岩手県沿岸の約40地域での浸水範囲を同時に求めて比較した.堤防の効果が大きい地域では実際の破堤を考慮していないため大きく過小評価となったが,それ以外の地域では結果は良好な一致を示した.また,堤防高を変えて浸水範囲を求めることで入力波や地形特性による堤防減災効果の違いを広域的に検討できることを示した.