2016 年 72 巻 1 号 p. 71-82
静岡県伊豆半島西海岸の戸田,土肥,松崎地区を対象として津波の氾濫計算を実施し,津波災害のリスクを分析した.三地区の現時点の津波災害リスクは,人的被害と建物被害の和として,1年間当たり1.8~2.3億円/年と推定された.避難率の向上と堤防建設によるリスク低減量を客観的に比較するとともに,今後50年間で浸水想定区域からの移転奨励施策を実施した場合の,リスク低減や適切な堤防高さに及ぼす影響などを定量的に議論した.これらにより,それぞれの沿岸地区で導入される各種津波対策の効果を具体的に相互評価するとともに,津波の発生頻度のみで決定されているレベル1津波高に対し,社会的に適切な津波対策を柔軟に策定するスキームを提案した.