2020 年 76 巻 1 号 p. 414-423
本研究は甚大な被害を引き起こした令和元年台風19号(令和元年東日本台風,以下,台風19号)の降雨の特徴を台風の経路と降雨量の関係から分析した.過去の台風,台風19号のアンサンブル予報実験,大量アンサンブル気候データを用いた分析を実施し,それぞれ台風の経路と降雨量の関係,数日スケールの予測からの台風19号の潜在的な降雨量,降雨量の温暖化の進行の影響を評価した.過去の台風事例を用いた分析から台風19号が東にずれた際に多くの地点で降雨量が増大していた可能性が示唆された.また,温暖化進行後の気候では台風の経路によらず降雨量は増大傾向にあり,秩父観測点では台風19号と類似の経路から東西方向に2度ずれたとしても従来の気候と同程度の降雨量となる傾向が示された.