1995 年 1995 巻 524 号 p. 105-119
多目的ダム事業は複数の目的から成る共同事業であるため, 共同事業費をいかに割り振るかという「費用割り振り問題」を調整する必要がある. 現在我が国において用いられている方法は, 分離費用身替り妥当支出法という慣用的な方法である. 慣用法は実用性に長所がある反面, 得られた解の理論的意味づけが不明確であるとの短所を有する. 一方近年の多目的ダム事業では, 社会的要請の変化に対して新たな展開を求められている. 本研究ではこのような新たな展開に対して, 慣用的な費用割り振り法がどこまで斉合性をもって適用可能かについての客観的基準の提案を試みる. その際, 協力ゲーム理論における費用割り振り法と慣用法との解の一致性に着目し, 新たな一致性の特定を行った.