日本農村医学会雑誌
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農村における高齢者の健康状態と社会的支援およびネットワークの現状と保健福祉の課題
岸 玲子築島 恵理
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1999 年 47 巻 6 号 p. 819-827

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抄録

最近の研究では, 高齢者の健康に対する社会的関係の効果について科学的な因果関係の証拠が数多く得られてきている。1991年から, 著者らも, 北海道の3つの地域, すなわち大都市札幌, 旧産炭過疎地夕張, および農村地域の鷹栖で地域ベースの長期的な疫学研究を比較継続している。その結果, 農村地域の高齢者では, 健康状態のうち, 腰痛や, 関節痛が, 他の地域より高率に認められたが, ケアやサポートを要するADLの低下や痴呆については差がなかった。一方, 社会的サポートの得やすさ, および高齢者の社会参加については, むしろ農村地域のほうが, 都市部および過疎地に比較してそれぞれ最もよく, また高い状態にあった。われわれの前向きコホート研究のデータをCoxの比例ハザード分析で解析した結果, 年齢や, 健康行動, 主観的および客観的健康状態で調整しても, 情緒的サポートを得られやすいことと, 社会参加が多いことは, 男性では, 早期死亡に対し, 有意の予防効果があったが, 女性ではそのような効果は認められなかった。これらの結果は, 地域のケアシステムが, このような社会関係について考慮して構築されるべきこと, 特に高齢者の社会参加が重要であることを示唆している。加えて, 将来における地域の高齢者の保健, 医療, 福祉の体制と関連する政策について述べてみたい。

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