日本農村医学会雑誌
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中高年者の排尿異常の実態とケアの課題
中谷 久恵福島 哲仁礒邊 顕生塩飽 邦憲西山 勉杉山 一教山根 洋右
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1999 年 47 巻 5 号 p. 701-707

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抄録

40~80歳代の自立して社会性活を営んでいる男女281人 (男: 137人, 女: 144人) を対象に, 排尿異常についてのアンケート調査を行い, 排尿異常が中高年者の生活に及ぼしている影響とケアの課題を検討した。排尿異常を有する者は122人 (43.4%) であった。排尿異常を「蓄尿障害」「排出障害」および「尿の出具合いが原因による日常生活への影響」の3つの障害領域に分類し出現率を見たところ, 蓄尿障害89人 (31.7%), 排出障害67人 (23.8%), 尿の出具合いが原因による日常生活への影響53人 (18.9%) であった (重複回答)。複数の症状を有する者や蓄尿障害と排出障害の両症状を有する者, 蓄尿障害や排出障害がないにもかかわらず日常生活への影響があると答えた者もおり, 症状の多様性や排尿障害の複雑性が認められた。年齢, 罹患疾患, 運動, 排尿回数と排尿異常との関連性をみたところ, 昼夜の排尿回数の増加と排尿異常を有する者との間には有意な関連性が認められた。尿の出具合いにおける排尿満足度は, 排尿異常を有する群において有意に低く, 生活の質が低下していた。本調査により排尿の問題は, 症状の有無だけではなく生活障害の範囲を含む「排尿異常」の概念でとらえることが重要であり, 生活の質への影響を考えた対策やケアの必要性が求められていることが明らかとなった。

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