日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー2 ヒトB細胞
ES2-3 血管炎症候群における自己抗体
石津 明洋
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2017 年 40 巻 4 号 p. 279a

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抄録

  自己抗体には病変形成の結果として産生されるものもあるが,血管炎症候群では病原性自己抗体が出現する特徴がある.そのような自己抗体のひとつがANCA関連血管炎におけるMPO-ANCAである.我々は,抗甲状腺薬であるPTUを投与された患者の約30%にMPO-ANCAが産生されることに着目し,MPO-ANCAの産生に好中球細胞外トラップ(NETs)の制御異常が関与していることを明らかにした.NETsは本来,感染防御に不可欠な自然免疫機構であるが,自己損傷の恐れもあるため,役割を果たした後は血清中のDNase Iにより速やかに分解される.我々は,ヒト好中球をPMAで刺激してNETsを誘導する際に,PTUを添加すると,DNase Iに対して抵抗性のNETsが形成されることを見出した.さらに,PTUの存在下で形成させたDNase I抵抗性のNETsをWKYラットに免疫すること,または,PTUの経口投与下で腹腔内にPMAを注射して,生体内でDNase I抵抗性のNETsを形成させることにより,MPO-ANCAが産生され,そのラットに小型血管炎が発症することを報告した.また,PTUとPMAを用いて作製したMPO-ANCA産生モデルマウスに,NETs形成阻害作用を持つPAD阻害剤を投与することにより,MPO-ANCAの産生が抑制されることも確認した.分解されず,生体内に残存するNETsに含まれるMPOが,何らかの理由によりCD4 T細胞に自己抗原として認識され,B細胞を刺激して病原性自己抗体であるMPO-ANCAが産生される可能性が考えられる.

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