日本臨床免疫学会会誌
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特集:慢性炎症と自己免疫疾患
急性大動脈解離後の全身性炎症反応の分子機序の解明
佐野 元昭安西 淳
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2016 年 39 巻 2 号 p. 91-95

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抄録

  急性大動脈解離とは,大動脈の内側に亀裂が入り,その裂け目から血液が大動脈の壁を裂いて壁内に流れ込む病気で,急性心筋梗塞とならんで,すぐに対処が必要な循環器の救急疾患である.著者らは,新規急性大動脈解離モデルマウスを用いて,大動脈解離発症後の血管炎症のしくみを経時的に解析することで,大動脈解離発症後,血管壁の外膜側に浸潤してきた好中球が産生するIL-6を介して大動脈解離発症後に血管壁の構造をさらに傷害し,解離の進展と拡大,破裂を引き起こしていることを発見した.この成果をもとに,好中球表面のCXCR2受容体を介するシグナルをブロックして骨髄からの好中球動員を抑制するか,IL-6のシグナルをブロックすることによって,大動脈解離発症後の生存率が改善できた.急性大動脈解離の急性期に血管の炎症を抑える治療は,予後の改善につながることが期待される.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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