日本臨床免疫学会会誌
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特集:再生医療の臨床応用
間葉系幹細胞を用いた炎症性関節炎の治療と再生
田中 良哉園本 格士朗近藤 真弘尾下 浩一張 香梅福與 俊介山岡 邦宏
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2015 年 38 巻 2 号 p. 86-92

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抄録

  関節リウマチに於いて破壊された関節,及び,特発性大腿骨頭壊死症などを誘因とする骨壊死症の機能改善は期待できず,骨・関節機能の再生を目指した治療法の開発が必須である.間葉系幹細胞は全身に分布する体性幹細胞で,骨芽細胞・骨細胞などに分化する多能性,顕著な自己増殖能,複製能を有する.間葉系幹細胞は骨髄,臍帯血,脂肪組織,胎盤などからも採取可能で,倫理的問題は殆どなく,移植時の安全性の点でも優れ,再生医療への応用が期待されている.著者らは,骨髄,あるいは,脂肪由来のヒト間葉系幹細胞は,炎症性サイトカインの存在下に於いて骨芽細胞,骨細胞,また,軟骨細胞へ分化が誘導されること,及び,そのシグナル伝達機構を解明した.また,間葉系幹細胞は破骨細胞の分化誘導を抑制し,TGF-β等の産生を介して免疫抑制作用を有していた.さらに,コラゲン関節炎モデルラットでは,間葉系幹細胞はポリ乳酸グリコールナノファイバーをscaffoldとして用いることにより,移植局所での間葉系幹細胞の局在性を高めて骨細胞への分化を効率的に誘導し,局所炎症により増幅される可能性が明らかとなった.さらに,TGF-βの産生等を介した免疫抑制作用の誘導が示された.以上,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は,破壊関節や壊死骨などの局所治療ツールとしての有望性が示唆され,骨・関節組織等の再生・修復を目指した実践的展開が期待される.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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