日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P1-014 ブレオマイシン(BLM)誘導性肺線維症モデルにおけるLeucine Rich alpha-2 glycoprotein(LRG)の役割
本田 宏美藤本 穣大河原 知治宇留島 隼人岩橋 千春世良田 聡仲 哲治
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2015 年 38 巻 4 号 p. 315b

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抄録

  【背景】LRGは健常人の血清中に存在する分子で,関節炎の滑膜や炎症性腸疾患の消化管上皮などの炎症部位で発現がみられ,生体内で炎症の病態形成に関わる機能を持つ分子であると考えられる.また,肺線維症モデルとして汎用されてきたBLM経気道投与モデルは,初期に細胞浸潤を特徴とする急性肺障害,後期に線維化を呈し,炎症の二つのステージを解析するのに有用である.【目的】炎症におけるLRGの役割を解明する.【方法】LRG欠損マウスを用いてBLM誘導性肺線維症モデルを作製し,炎症初期における細胞浸潤とサイトカイン発現を,炎症後期における線維化をそれぞれ評価した.さらに線維芽細胞株を用いて,TGFβの作用に及ぼすLRGの影響を調べた.【結果と考察】野生型マウスにBLMを投与すると,肺でのLRGの発現が上昇した.LRG欠損マウスでは,肺に浸潤する好中球などの炎症細胞が野生型と比較して少なく,肺における炎症性サイトカイン発現も低値であった.好中球の炎症部位への遊走に関わるIL-17とCXCL1の産生はLRG欠損マウスで抑えられた.さらに,炎症後期の線維化はLRG欠損マウスで抑制されており,また線維芽細胞株においてLRGはTGFβのシグナルおよび作用を増強した.以上から,LRGは炎症初期にはサイトカイン産生に関与して細胞浸潤を促進し,炎症後期にはTGFβを介して線維化を促進するという,炎症の各ステージにおいて炎症の病態形成を促進させる機能をもった分子であることが示唆された.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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